「めぶく」が中川政七商店の「地産地匠アワード」で初代グランプリを受賞しました
地産地匠アワードは、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる中川政七商店による、ものづくりの新たな循環を目指した取り組みです。
「地産地匠」とは、地元生産×地元意匠(デザイン)のこと。地元メーカー× 地元デザイナー2者合同によるプロダクトを募集し、すべての受賞商品の販路支援まで行う唯一無二のアワードです。すべての受賞作を中川政七商店が販売支援をすることで、メーカーとデザイナーが協働してこそ生まれる新しいスタンダードの発掘と、産地の作り手・デザイナーへの継続的な還元を目指しています。
2024年度は、2023年10月から2024年1月まで応募を受け付け、日本全国27県から木工、漆器、染織、陶器、和紙、ガラスなど多彩な工芸素材を活かした合計80点の応募がありました。
今回、「めぶく」はその頂点となる初代「グランプリ」に選ばれました。
地産地匠アワード 第1回グランプリ 受賞データ
【商品名】 「めぶく -漆の種に願いを託すお弁当箱-」
【受賞内容】 グランプリ(80点の中から1点選出)
【地域名】 会津漆器(福島県会津地域)
【受賞者】
企画・運営:漆とロック株式会社/猪苗代漆林計画 貝沼 航(2005年福島県会津若松市にて創業。“繋ぐ・伝える・生み出す”を役割として、会津漆器を中心とした沢山の職人さんたちと共に活動する。)
グラフィックデザイン:ヘルベチカデザイン株式会社 佐藤哲也 遠藤令子(2011年福島県郡山市にて創業。福島の基幹産業でもある農業を中心に温泉街の再生プロジェクトや地域観光のリブランディングなどを担当。)
プロダクトデザイン・製作:漆器職人(塗師・漆掻き) 平井 岳(1988年京都生まれ。2016年に福島県郡山市にて独立。福島県内でも2,3人しかいない貴重なプロの漆掻き職人として、漆の未来を担う。)
【評価ポイント】
漆器が一般家庭で使われなくなりつつある中、漆のものづくりの生態系を世界に残していくための機能、意志、そして意匠が、「漆の種」に包括されている点が大きく評価されました。瞬間的なものづくりや消費ではなく、産地の持続性に目を向けた商品としての完成度が認められ、審査員の満場一致でグランプリを受賞しました。
【受賞コメント】
漆も、種も、タイムカプセル。だから、「漆器を土に還す」という行為に、祭礼的な祈りと遊び心を添えて、その思想とプロセスをみんなで楽しむようなものが作れないか。そして、その先に、漆の木を守り育てるコミュニティの繋がりになるような漆器が作れないか。そんな長年の構想を発表する場をずっと考えてきましたが、今回、この地産地匠プロジェクトに応募したのは、この挑戦的なプロダクトがどう受け止められるか知りたいということ、そして折角なら中川政七商店さんと一緒に大きく広げていきたい(届くべき方たちにきちんと届くように)、と思ってのことでした。モノで溢れる現代。新しい物を生み出すこと以上に、物の終わりのデザイン、つまり“物の命の仕舞い方・願いの託し方”を考えてみることが、私たちに とってより大切なことかもしれません。そんな私たちのメッセージを受け止めてくださり、ありがとうございます。 (漆とロック株式会社 貝沼航)
【コンセプト】
縄文遺跡から漆製品が出土しているように、防腐・耐水性に優れた漆で保護された器は、時を超えるタイムカプセルです。ウルシという木は、自生せず人が育てないと残っていかない木ですが、その存続は危機に瀕しています。しかし「種」さえ残せば、ウルシを未来に繋ぐことができるかもしれません。そこで、漆の種を埋め込んだ「現代の信玄弁当」を作りました。器の役割が終わったら、これを土に埋めていただきます。未来の誰かが種と共に発見してくれるかもしれません。しかし本当の意味は、これが「漆を守り育てるコミュニティの証」となることです。このような願いを込めた器を手にしていただくことで、その資金は、現代において漆文化を途切れさせないよう活動する新たな漆林づくりに活かされます。
【志】
このプロダクトのベースには、「猪苗代漆林計画(いなわしろ・うるしりんけいかく)」という、漆の木の植栽活動があります。福島県会津地方、猪苗代湖と磐梯山に囲まれた休耕地で、漆器づくりの原料となる漆の木の育成に取り組む団体です。漆とロックに加えて、地域の若手世代の漆器職人や農家が集い、国産漆の供給不足と農地の獣害問題という2つの課題を解決しながら、人々が自然と触れ合い、多様な担い手が学び育っていく漆林づくりを目指しています。2年間の試験植栽を経て、本格的に活動を展開・発展させていく段階になっています。衰退する日本の里山と工芸に活気を取り戻し、未来に繋がる新しいモデルを作っていこうとするプロジェクトです。